目次
はじめに
Salesforceの製品であるAccount Engagement(旧Pardot)は、マーケティングオートメーションツールとして多くの企業で活用されています。特にフォームを通じて収集した見込み客データをSalesforceに同期する機能は、マーケティングと営業の連携において重要な役割を果たしてきました。しかし、Summer ’22 リリース以降、この同期の仕様が大幅に変更され、多くのユーザーに影響を与えています。本記事では、これまでの同期方法と変更点、そして今後の対応策について詳しく解説します。
これまでのAccount Engagementフォームからの同期方法
フォーム通過時のSalesforceデータ更新の仕組み(従来)
以前のAccount Engagement(AE)では、フォーム送信時にSalesforceのデータをほぼリアルタイムに更新することが可能でした。同期のトリガーとなるのは「ユーザーへ割り当て」の設定であり、完了アクションの最後に「ユーザーへ割り当て」を設定することで、ほぼリアルタイムに同期が行われていました。
例えば、一般的な完了アクションの設定順序は以下の通りでした:
- フォームフィールドの値をプロスペクトのカスタムフィールドに格納
- キャンペーンへの追加
- ユーザーへ割り当て(これによりSalesforce同期が開始)
この順序で設定することで、1〜3のアクションを実行した後にSalesforce同期が行われるため、ほぼリアルタイムなデータ連携が可能でした。
同期の仕様変更による影響
完了アクションの並行処理による順序の廃止
Summer ’22 リリースで、完了アクションはすべて非同期処理(並列処理)となり、実行順序の概念が廃止されました。そのため、どのアクションが先に実行されるかを予測することができなくなりました。(https://trailhead.salesforce.com/ja/trailblazer-community/feed/0D54S00000HDMTz)
これにより、以下のような影響が発生します:
- Salesforce同期のトリガー(ユーザーへ割り当て)が意図せず最初に実行される可能性がある。
- 同期前に必要なデータ処理(キャンペーン追加、カスタムフィールド更新など)が完了していない状態で同期される可能性がある。
- 従来の同期順序を前提とした設定済みの完了アクションが正しく機能しなくなる。
影響の大きいユースケース
以下のようなケースでは、特に影響が大きくなります:
- 広告パラメータの取得とキャンペーン振り分け
- 変更前:広告のUTMパラメータを取得し、それに基づいてキャンペーンを振り分け、Salesforceのキャンペーンメンバーを追加。
- 変更後:パラメータ取得前に同期が行われると、Salesforceのキャンペーンメンバーが追加されない可能性。
- 対応策:Engagement Studioを活用し、同期処理を実行。
- リード・取引先責任者へのTODO作成
- 変更前:完了アクションでSalesforceのリード・取引先責任者にTODOを設定。
- 変更後:完了アクションでTODO作成を設定してもリード・取引先責任者にTODOが作成されない。
- 対応策:Engagement Studioを活用し、同期処理を実行。
今後の対応方法
Engagement Studioの活用
完了アクションの順序を維持したい場合は、Engagement Studioを活用するのが推奨されます。
- 完了アクションにEngagement Studioを起動させるリストを設定:
- リスト追加(Engagement Studioに設定した受信者リストを設定)
- ユーザーへ割り当て
注意点:
- 繰り返しを許可したEngagement Studioの作成数に制限がある(最大10個まで)
- 繰り返しを許可したEngagement Studioは、1日に2回送信しても2回目以降は動作しない
Salesforceフロー の活用
Salesforceフロー を利用して、Salesforce 側でデータ処理を行うのも有効な手段です。
- 例:AEのプロスペクトデータを受け取り、フローで必要なデータチェックを行い、適切なアクションを実行(キャンペーンメンバー追加など)
まとめ
今回の仕様変更によって、多くのフォームを使用し、Salesforceとの同期を活用していた企業にとって、運用方法を見直す必要があります。
特に以下のような企業は大きな影響を受けます:
- 多くのフォームを利用し、Salesforceに同期する必要がある企業
- 広告パラメータなど正確なデータ取得が必要な企業
- リアルタイムでのデータ連携を重視する企業
これらの企業は、Engagement Studio や Salesforceフロー などを活用して、新しい同期仕様に適応する必要があります。
なお、Salesforceの仕様変更は頻繁に行われるため、最新情報を随時確認しながら運用を最適化していくことが重要です。